西部開拓時代や
カウボーイを連想する人も多いが、それはあくまでも
ハリウッドの映画産業や
ブロードウェイ・ミュージカルなどが作り上げた
西部劇の影響であり、元々はそれほど深い関係にはない。そもそもカウボーイ全盛の19世紀にはまだ「カントリー」という概念は存在せず、20世紀に入ってからの西部劇で演奏された曲も、
クラシック音楽の作曲家が民謡などをベースに作った
映画音楽・
舞台音楽の類で、厳密に言うとカントリーというジャンルにも当てはまらない場合が多い。 後に一部のカントリー・ミュージシャンがそのイメージと人気にあやかり、
カウボーイハットやブーツを身に着け、西部劇風の演出を取り入れる様になる。 しかし現代のカントリー・ミュージシャンは西部劇で描かれるような世界観ではなく、むしろ現在のカウボーイのイメージを確立し、
ピックアップトラックや
ATV、
釣り具や
銃器・
狩猟具関連の
テレビCMなどで頻繁に彼らの曲が使われる。
現在カントリー・ミュージックはアメリカを中心に、
カナダ、
オーストラリア、一部
ヨーロッパでも人気だが、やはりファンやアーティストには白人系が圧倒的に多く、そもそもがアメリカ南部やアパラチア発祥の音楽のため、一部では「
人種差別と関係が深い音楽」と誤解されがちである。 実際、戦前や少し古い時代の曲の中には人種差別的な歌詞が入ったものや、たとえ現在であっても
アンダーグラウンドなシーンでは、
差別用語・
放送禁止用語を連発する過激な歌手も一部に存在する。 しかしながら、それはどのジャンルの音楽にも当てはまることで、カントリーだけが特別というわけではない。 現在のカントリー業界は、アメリカ音楽産業界でも人気の中心を担うジャンルであり、さらにそれを世界に広めていこうという方針を採っているので、あからさまな
人種問題は存在しない。 特に1970年代以降、アフリカ系の
チャーリー・プライド()やフィリピン系の
ニール・マッコイ()など有色系のアーティストたちも第一線で活躍し、さらにバンドメンバーに目を向ければ、もはや
ヒスパニック系や黒人、アジア系も見受けられる。
現在のカントリーは、音楽的には様々な価値観を取り入れて発展しているが、アーティストやファンの政治的スタンスや歌詞に込められた心情の面では保守的な部分が強い。 元々が開拓民の民謡から派生しているため、自分の家族や故郷の州や町、また田舎の
素朴さ、
暖かさ、
荒々しさなどを愛し、カウボーイやレッドネックといった自分の田舎臭いキャラクターを誇りとし、それを主張する内容の歌詞が多く、その裏には東部や都会に対する対抗意識や反発も表現される。 そしてそれが更に大きくなると、
パトリオティズム(:
愛国心)や
国粋主義と結びつき、アメリカ的価値観やアメリカ的自由を推奨する形として現れる。 その代表曲が1980年代初頭にヒットした
リー・グリーンウッド()の
"God Bless The USA"である。