ケチュア語で、「タワンティン」とは、「4」を意味し、「スウユ」とは、州、地方、場合によっては国を表す。訳すと「四つの邦」という意味である。「四つの邦(スウユ)」とは、
クスコの北方の旧
チムー王国領や
エクアドルを含む北海岸地方の
チンチャイ・スウユ、クスコの南側から
チチカカ湖周辺、
ボリビア、
チリ、
アルゼンチンの一部を含む
コリャ・スウユ、クスコの東側の
アマゾン川へ向かって降る
アンデス山脈東側斜面の
アンティ・スウユ、クスコの西側へ広がる太平洋岸までの地域の
クンティ・スウユの4つを指す。4つの州へは、全てクスコから伸びる街道があり、インカの
宇宙観に基づいて4つの区分を象徴するようクスコ自体も建設されていた。
インカには様々な
創造神話が存在していた。そのうちの一つ
ビラコチャ伝説では次のとおりである。ビラコチャは、村を建設するためにクスコに近いパカリ・タンプ (Paqariq Tanpu) という所で暮らしていた4人の息子(
マンコ、アヤ・アンカ(Ayar Anca)、アヤ・カチ(Ayar Kachi)、アヤ・ウチュ(Ayar Uchu))と4人の娘(
ママ・オクリョ(Mama Ocllo)、ママ・ワコ(Mama Waqu)、ママ・ラウア(Mama Rawa)、ママ・クラ(Mama Cura))(彼らは
アヤル兄弟として知られている)を送り出し、旅の途中にマンコとママ・オクリョの間に生まれた
シンチ・ロカが、自分たちのクスコの谷に仲間を導き新しい村が開かれた。また、兄弟姉妹たちはクスコの谷へ遠征しながら近隣の10の部落を併合していったとも伝えられている。この時、支配者の象徴である金の杖が父ビラコチャによりマンコ・カパックに与えられたとされるが、一説にはマンコ・カパックは兄を嫉妬と裏切りで殺してクスコの支配者になり、
マンコ・カパック(Manco Capac)として知られるようになったとされる
[Gary Urton, The History of a Myth: Pacariqtambo and the Origin of the Inkas (Austin: University of Texas Press, 1990).]。