当時の新しい研究分野である
確率論と
統計学は
最小二乗法などの形で主として天文学に応用されていた。
ラプラスは確率論を社会研究にも応用することを考えていたが、ケトレーはこのアイディアに基づき「社会物理学」の名で研究を開始した。彼の目標は、犯罪率、結婚率、自殺率といったものの統計学的な法則を理解し、他の社会的要因の変数から説明することにあった。このような発想は
自由意志の概念に反するということで当時の学者の間に議論を巻き起こした。18世紀以来の「神の秩序を数学的に明らかにする」という思想ではなく、個人の行動に基づいて科学的な法則性を追究した点で功績がある。
彼の最も有名な著書は「人間とその能力の発展について-社会物理学の試み」
Sur l'homme et le d?veloppement de se facult?s, ou Essai de physique sociale(
1835年)である。ここでは彼の考える社会物理学を概観し、「平均人」(
l'homme moyen:社会で
正規分布の中心に位置し
平均的測定値を示す)という概念を提出している。そのほかに「社会物理学」
La physique sociale(
1869年)などの著書があり、特に19世紀後半の社会統計学に強い影響を与えた。